ＥＵで台頭する左右の過激派はプーチンと親密２０１５年２月１４日号のロンドン・エコノミストは、衝撃的なリポートを掲載した。ＥＵ域内で急速に支持率をのばしている左右の過激なポピュリスト政党が、ロシアのプーチン大統領と親密な関係を築きつつあるというのだ。 以下は、そのほぼ全文である。 --ＥＵ諸国の左右のポピュリスト政党は、２０１４年５月の選挙で急速にその勢力を拡大し、ストラスブールの欧州議会の４分の１の議席を獲得した。そしてその大半はプーチン大統領と親密な関係を築きつつある。 １月の総選挙で与党になったギリシャの急進左派 Ｓｙｒｉｚａは、その筆頭だ。 外相に任命された Ｎｉｋｏｓ Ｋｏｔｚｉａｓは就任最初の訪問国にロシアを選び、２月１１日モスクワを訪問した。 そもそも Ｓｙｒｉｚａは、ロシアに対するＥＵの制裁に乗り気でなく、新たな制裁強化に反対している。 同じく左派系で最近支持率を伸ばしているスペインの Ｐｏｍｏｄｅｓも親ロシアの傾向を強めており、ウクライナ問題をめぐるＥＵの対ロシア政策を、矛盾だらけと批判している。 右派ではフランスの国民戦線、Ｆｒｏｎｔ Ｎａｔｉｏｎａｌが、公然とプーチン支持を打ち出している。党首のマリーヌ・ルペン女史は、すでに数回モスクワを訪問している。 ＦＮは最近クレムリン配下の銀行Ｃｚｅｃｈ Ｒｕｓｓｉａｎ Ｂａｎｋから、９４０万ユーロ（１３億円）の融資をうけた。うち４００万ユーロはすでに実施されているという。ルペン女史によると、ＦＮはＥＵ域内の銀行から融資を断られているようだ。 ハンガリーの極右政党 Ｊｏｂｂｉｋは、公然と親ロシアを表明している。同党は２０１４年の国会選挙で、２０％の票を獲得した。２０１３年この党の指導者は、ＥＵは欺瞞にみちている、ロシアこそ欧州の伝統の守り手であると発言した。 欧州議会の議員であり、しばしば問題になる人物 Ｂｅｌａ Ｋｏｒａｃｚ はロシアのためのロビー活動をしており、ロシアのクリミア侵入を支持した。
ハンガリーの与党 Ｆｉｄｅｓｚは、かつては強力な反共政党であったが、いまやロシアとの関係強化に動いている。 確認されたものではないが、イギリスとイタリアのポピュリスト政党に対しても、ロシアが誘いの手を伸ばしているという情報がある。 イギリス独立党ＵＫＩＰの党首、 Ｎｉｇｅｌ Ｆａｒａｇｅは、プーチンを政治家として世界一と評価し、敬意を払っていると述べた。 しかしフランスのＦＮを除いて、欧州のポピュリスト政党が、ロシアから資金を受け取っているというはっきりした証拠はない。 彼らの財政は不透明で証明はきわめて難しい。事情にくわしい Ａｎｔｏｎ Ｓｈｅｋｈｏｔｓｏｖ は、フランスのＦＮに対する融資は例外的で、一般的なものではないという。 Ｓｈｅｋｈｏｔｓｏｖによると、少なくとも過去の例では、クレムリンは政党に対する資金援助ではなく、政治家個人に対する「手当」の形を好んで使う。 ロシアはこうした欧州の友人を大いに活用している。たとえばウクライナの選挙を正当化しようとする場合だ。 クリミアの住民投票や親ロ派が実施したドンバスの選挙には、欧州から一団のポピュリストが駆けつけ、投票は正当だったと大声で騒ぎたてた。その中にはハンガリーの Ｋｏｖａｃｓやルペンの顧問 Ａｙｍｅｒｉｃ Ｃｈａｕｐｒａｄｅもいた。 ロシアのメディアは、彼らは公正な投票に立ち会う公式のオブザーバーであると伝えた。 以上がエコノミストが伝えた報告である。 ギリシャのシリザはすでに政権を獲得しているし、フランスのルペン女史は、２０１７年の大統領選で大統領に選ばれる可能性がささやかれている存在である。 力による勢力の拡大をはかるプーチンは、これらの欧州ポピュリスト勢力との繋がりを、どのように利用しようとしているのだろうか。不気味である。 かつてスターリンがコミンテルンを組織し、西欧はもちろん全世界の共産党を支配下においた恐怖の時代を思いだす。崩壊したはずの共産主義ソ連と、プーチンのロシアに、共通する陰険な体質をみるのは、考え過ぎだろうか。 |